その道は世界へ続く

冬が過ぎ春がきて、また夏がやってきた。
夏のど真ん中にいると、冬の寒さを想像できない。
冬のど真ん中にいるときは、この灼熱の日々を思い出せない。

太陽の位置も違う
影の長さも違う

もう何度目の秋になるのだろう
またアジア大会がやってくる
横一列に並んで、国旗を見ながら、胸の国旗に触って
世界中どこにいても同じ旋律が流れる
この国を代表する選手だけがその場所で君が代をうたう

どこの県の出身だとか
どこの高校からどこの大学に行ったのだとか
横文字のプロフィールには何も書かれていない
JAPANの5文字とポジション そして身長体重年齢
その横にCAPと書かれた小さな数字
選手たちを示す情報はたったこれだけである

どこの出身のどこの学校だっていいじゃない
ホッケー歴も代表歴もなあんにも書いてない
新人でもベテランでもいいじゃない
どこから来ましたか?日本です。
日本ってどこにあるの?
そんな会話が聞こえてくる

彼らはある種の猛獣で 檻を出たがっている。
檻から出て暴れたいのだ 持ち前の俊足で あるいは頑丈な前足で
獲物を狩りたいのだ 平和すぎる檻の中にいて
いつも頭の中で獲物を狙っている
この前はうまくいかなかったが、あれから体も大きくなり爪も鋭くなった
今度は仕留めることができるだろう そんなふうに想像しながら
外に出たくて仕方がないので、鍵のかかった扉の前でぐるぐると歩き続ける

いつだれがその鍵を開けて解き放つの
もうとっくに準備はできている
生まれた順番でもなく 体の模様の美しさでもなく
強い順に名前を呼ばれて檻から解き放たれるのだ
どこの生まれであろうとどこの育ちであろうと
何を食べて大きくなったのか そんなことは誰も聞かない 聞く必要がない

檻の外側は戦慄の荒野だ
枯草に火が燃え移り、赤々とあたりを照らしている
見たこともないような獣に遭遇することだろう
想像もしたことがない壮絶な世界がその火の向こうに広がっている

日の丸は沈む夕日ではなく、昇る朝日
遠い水平線の彼方 はるか向こうの空から
真っ赤に浮き上がる 始まりの太陽

冬が過ぎ春がきて、また夏がやってきた。
夏から秋に向かう途中で檻の扉が開く
私たちは檻の外側から

どいつが出てくるんだろう!
あいつかな あいつ強そう
こいつかな 足が速いぞ

と噂をしている真っ最中なのだ。







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by fraterkouhou | 2014-08-05 19:24 | つぶやき

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