2012年 12月 10日
私的死的指摘
年の瀬も押し迫って参りましたが私の友人(ガンで闘病7年)がいよいよまあアカンということでー本人及びご両親からの強い希望もあり最後の時を出来る限り一緒に過ごしている。
なんて素晴らしい充実した時間なのだろう?
ひと昔前…多感な青春時代の頃の私はそれまでの自分の生い立ちもあってちょっと死を達観しているところがあった。
と自分では思っていた。(早い話が死をナメていた。)
しかしある日唐突に親しい友人を失うという経験を繰り返す中で、自分は何もわかっていなかったんだなあと気づいた。
死はどうでもよくて、達観しているとかいないとかそんなもんは意味ないのだ。大事なのは生であり生きてる時間なのだと気づいたのでした。
さて友人は刻々と迫る死を大して恐れもしないで(それはそれで凄いのだが!)、隣室でさめざめ泣くご両親の様子を気にしながらこんな親不孝はないよねーと笑っている。
なんていうか、人は弱いけど人は強い。
人もまた動物なのだと知る。
よくまあ一緒にいられるね、自分ならとても無理!と周囲に驚かれながら私は同じ部屋に普通に泊まったり寝てる横でサキイカを買ってきてゲームをしたり、ノートPCで仕事をしたりしてる。
んで、なんらかの定時?になるとお母さんがお茶とかコーヒーを出してくれるんだけどこの感じ、なんか記憶があるぞ?と思っていたらほら、家庭教師のバイトをしていた時だ!
終了10分前ぐらいになると子供のお母さんがお菓子と紅茶を運んでくるアレだ!うん、懐かしい!
なんて話していたら友人が「どうせあんたなんか家ではイラン子でしょう、もうめんどくさいからこのままうちの子になってやってよ」とか言う。
いや、私これでも結構イラン子じゃないし!(汗)あくまでも本人評価だけど親からしてみたらまだイラン子ではない気がする、僅かではあるが!
紅白の話をしてるんだけど医者は紅白まで持たんと言う。去年もそんな話をしていたが一年持ったわな~。
しかしさすがに今年はダメっぽいので紅白は見れそうにない。毎年紅白なんか見てないくせに見られないとなると無性に悔しく、どうしても見たいような気になってくるんだろう。
とりあえず紅白まで頑張るか、と言ってんだけど私は年末年始はいないからさ、もう一息がんばるかその前にアレするかしないとバイバイは言えんよ!
前はやだから後にするか、持つかな?みたいに話していたら隣室でお母さんが号泣。
仕方がない、別れは惜しいし悲しくないはずないけれど、私はそれはそれこれはこれって思ってまた通ってくる。
足が冷たいからあんかみたいなのをホームセンターで980円で買ってきた。まあ来年また使えばいいか、と思ったけど友人は微笑んで「自分には来年はちょっとしかないから置いてっちゃダメだよ」と言う。
そっかじゃあ持って帰るわ、終わったら。終わったらって何が?あ、何が終わったらなのかな、自分でも無意識に言ったけど命が終わったら、じゃなくて単純に冬が終わったら、ぐらいの軽い気持ちだってばーやだなー(笑)
隣室でお母さんがまたしても号泣、「うっわめんどくさい、もう泣くんだったらイオンでも買い物行ってこいと言ってやって」って言われても人の親にそんなこと言えるわけないっつーの(笑)
全日本選手権見たあ?見たよー最後惜しかったね!って何が!??うちは勝った方だよ?惜しかったとかないよ!ってね。
知らなかった、つけたらもうやってたから自動的に青を応援してたけど負けちゃってがっかりしてた。赤だったんなら良かった良かった!
あああ…カレー食べたいな、ちょ、オカンにカレー作れって言ってよ!
だから~、うちのオカンを家政婦がわりに使うのやめて(笑)頭痛いからイブ買ってこいとか言ってたの聞いてた!自分で買いに行けと言いたいわ。
いやだ雪積もって寒いもん、それにオカンはどうせイオン行くんだからオカンに頼むの何がいけないの、じゃあ二人でいくか?
だめ、誰もいないうちに死んだらなんの意味もないからどっちか一人残って!
じゃあどっちか選んでよ。
選べない、オトンもいないとだめ、自分はいいけどいないうちに子供が死んだらオカンとオトンが生きていけん気がする。
じゃあ私なんなの(笑)
それはスーパーサブということで…
オカンと二人だと息が詰まってきて予定より早く死にそうな気がする、そしてそれを言ったらオカンが号泣して実家に帰ってしまった(笑)
ええっオカンはいい年をして実家に帰ったの?実家ってどこよ?
知多半田。
はあっ?金山から15分かよ!なんじゃそりゃー(笑)(笑)
ここからだと行って帰って45分ってイオン行くより近いわっ!せめて南知多とか西尾とかならともかく。
眠いぃ眠いぃ
薬が効いてると意識が遠のく…勿体ない…生きてるのに寝てるとは勿体ない…できることならずっと起きていたい…
悪いけどぉそんな超人生活には付き合えんよ、私は最低でも三時間は寝たいし、紅白見ようって人がずっと起きていたいとか意味が分からん、寝てる間も人生だと思う!(断言)
お母さーん今夜なんですか?
肉うどん?あ、私苦手だ、外食していいですか?だめ?じゃあきしめんにして!卵とじきしめんのあんかけで出汁はお澄まし。これぞ名古屋風。
生きるって素晴らしい。
足が痒くて仕方がないからムヒを塗ったらその匂いで友人が気持ち悪い気持ち悪いって言う。
じゃあなんならいいのかってキンカンならマシというので
お母さーん
イオン行きますよね?キンカンお願いします!あっオトン帰ってきたよ!オトンに行ってもらおっかイオン
ちょーベッド上げて雪見ながら対戦しよ!対戦が嫌ならチームで戦お。
ていうかオカンも一緒にゲーム。
オカンにゲームは無理だって!
ああこんな時兄弟姉妹がいれば!
やっぱ子供は二人は生まないとな。
オカンはなんで二人目生まなかったのかな?
オカンは子宮がんだったらしいよ。
えっ親子でがん家系かーそらダメだ。
隣室でオカン号泣!
オカンはおかしい
来れば泣く、帰ろうとするとさらに泣く、いる間じゅう会話をダンボしていて何を話していても泣く。
どうすりゃいいの?
どうしょーもない、それがオカンだからさあ!
ずっとずっと死ぬまでいてよ。
いいよ別にしばらく暇だし。
いつまでも友達でいてよ。
いいよ別にそんなん意識したことない。
死んだらVAIOあげるわ。
いらない、私はpanasonic派だから。VAIOは裏蓋開けるとすぐ壊れるし。
手術しないほうが長生きするかな、ってもうしちゃったあとだけど(笑)
してもしなくても死ぬときは死ぬよ。
神様…私は死を知らない
でも友人は間もなくそれを知る
今から頑張って肉うどんを食べます。
オカンはイオンでキンカンを買う。
友人「全日本選手権のビデオもう一回流して。今度は赤を応援する感じで見るし」
私「ブルーレイないの?」
友人「ない」
私「買えって!私が使ってあげるから!」
友人「ん~なら買おうかな(笑)」
私「高いの買うよ!」
友人「後払いにして保険で払う?」
私「受取人は誰なの?」
友人「知らない」
私は友人にかわってアルバムの整理をしている。見られたら困る写真や捨ててほしい痛いアイテム(笑)、借りっぱなしの何かを返したり…、
友人は意味不明に年賀状を書いている。
水底の小さな魚の鱗のように、キラッキラッと命が輝いている。
ただそれだけのこと。
奥田民生かける?
いやだ私は最近フジファブリックのマイブームが来ているからフジファブリックがいい!
あー、あんとき奥田民生かけてやりゃ良かった、って後悔するかも…とかは思わないの?
思わない!あんとき私が聞きたかったフジファブリックをかけてあげてほんっとうに良かったな、うん!と自己満足するタイプだから。
ゴミはごみ箱に入れてよ!それでもA型なの?
ゴミなんかごみ箱入れなくたって死にゃあしないって!風呂一ヶ月入らなくても人は死なない!
誰よりもきれい好きできちんとしてきたのに最後の最後に部屋をゴミだらけにされて死ぬのかーやだなーこいつ部屋めっちゃくちゃやんか!とか言われるじゃん!
うん言われるね(笑)私は間違っても自分が散らかしたとか言わないもん、死人に口なし!(笑)
もぉ~じゃあミスチルベスト!もう譲れんよ!
それなら了解した。
通販でブルーレイ買うよ。
どうぞどうぞ。
明日も来るね!明後日も来るね!ブルーレイいつ来るかな?いまポチッたー。
オカンはもう泣かなくていい!
私がこいつを看取る。
そしてあんかとブルーレイとミスチルベストと自分で作ったアルバムと全日本選手権のビデオを持って帰ります。
もうすぐ死ぬからってなんでもかんでも言う通りにしてたらこいつの人生なんも面白くない!
いつも通り普通にしてケンカもして嫌なものはイヤいいものはイイ、明日が来るか来ないかなんてそんなもん知らん。来る途中で私が事故って先に死ぬかも知れんし、もう分からん、そんなこと考えたらやっていけん、知らん!
お母さーん
ちょっと一回家帰るわ…実家かすめてくる。うちのオカンが先月から顔見せないとかいって半狂乱で留守電入ってるもん。
泣かないで、泣かないでお母さん
ああもう行ったり来たりの時間が勿体ない、電話代とガソリンと高速代のの無駄だ!うちの実家に友人とオカンとオトンに合宿してもらうか、友人宅にうちのオカンを強制移住させるか、もうどっか一ヶ所に難民キャンプを作ってそこに通う感じになりゃ楽なのに!
飯はどっちかのオカンが交代で作れ!バリエーションも増えていいじゃんか!
人数が多い方が見張りのローテにも余力が生まれるしね!
あるいはだな、実に迷惑な話だけど私の家に全員住むか…そうなると犬二匹と猫四匹に車5台か…とうてい養えないどーしょーもない扶養家族だな、しかも一人は寝たきり(笑)生活保護とはこういうときにレスキュー的に受けるべきものだろうな。うん。
ああ運命という狙撃手に額を狙われて、赤い点が点滅している私の友人よ。
顔をどこに動かしても赤い点は追尾してくるんだね!
闇の中でも赤外線スコープが額を狙う、胸よりも心臓よりも確実なのは額なんだね、私は手をかざして逆光の向こうの狙撃手を見てるけど何も見えない。
どこから狙っているのか、いつ引き金を引かれるのかも分からず、仕方がないから私は部屋中を赤く照らして、額の赤い照準をなかったことにしてみたよ。
私は葬式には行く気がない。
意味ないから。
代わりに今を一緒に生きる。
バイバイって必ず言う。
誰にも一度も言えなかったバイバイを初めて言えるチャンスを友人は与えてくれた。これで何か変われるよ、と友人は言う。私はその時だけ泣く。こいつほんとにイイやつだなって思う。
隣室からの泣き声は聞こえない、オカンはそういう話の時はなぜかいない。いやオカンがいないときを狙って話してるんだ友人が。そこもまたすごいなって思う。
私が泣いてるのを聞いたらオカンは絶望して知多半田の実家からもう帰ってこない可能性があるな。
この家の希望の光のスイッチを私は震える手で握っていて、雪降る空を見上げながらどうしようどうしよう、と呟いている。
えーとなんだっけ
オマエは1月5日まではどうにかがんばれ、四国の和三盆のなんかすごいロールケーキ買ってきてあげるから。一本食ってよし。6000円のロールケーキ。
あれ食うまでは死ぬな。
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by fraterkouhou | 2012-12-10 17:37 | つぶやき